工場・倉庫の耐用年数と修繕・メンテナンス費用
頑丈な造りになっている工場や倉庫にも耐用年数(寿命)があります。
耐用年数は工場や倉庫の建築材に異なりますが、定期的な修繕やメンテナンスを施しているかどうかでも大きく違います。
この記事では、工場や倉庫の耐用年数の目安と、耐用年数を延ばすためのメンテナンスにかかるコストについてご紹介します。
目次
1. 工場・倉庫の耐用年数
工場や倉庫の耐用年数は、「法的耐用年数」という国税庁が定めた減価償却資産耐用年数に基づいています。
建材と構造によって、法的耐用年数にはかなりの差があります。
●法定耐用年数
建材・構造 | 耐用年数 |
---|---|
木骨モルタル造 | 14年 |
木造 | 15年 |
合成樹脂造 | 15年 |
金属造 | 31年 |
レンガ造 | 34年 |
石造 | 34年 |
ブロック造 | 34年 |
鉄筋コンクリート造 | 38年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | 38年 |
耐用年数は法的耐用年数のほかに、修繕・メンテナンス費用が工場・倉庫のリフォーム費用を上回る時期を示した「経済的耐用年数」と、紫外線や自然災害などの影響を加味しない建物自体の「物理的耐用年数」の2種類があります。
経済的耐用年数は工場や倉庫の運用方法によって利益が異なりますし、物理的耐用年数はさまざまな環境の影響により設定よりも短くなりますので、まずは法的耐用年数を目安にするのがいいでしょう。
倉庫の場合は、「テント倉庫」と「金属製倉庫」に大きく分けられます。
テント倉庫の耐用年数は、膜材は10年から15年、鉄骨フレームは30年から40年、鉄骨造および金属造の倉庫の耐用年数は30年から40年です。
2. 発生する劣化状況
劣化状況については、外装(屋根・外壁)と内装を分けて点検しましょう。
(1)屋根
屋根については安全に確認できる部分は目視できますが、高所などの危険な部分については事故防止のため、専門業者に依頼して劣化状況を確認するようにしましょう。
屋根は、塗装の剥がれやひび割れ、サビといった劣化状況が、メンテナンスを行うサインです。
(2)外壁
外壁は日々目視で確認できますし、手のひらで触れてみることもできます。
塗装の剥がれやひび割れ、触れてみて白い粉がつくチョーキングもメンテンナンスを行うサインです。
外壁材は問題なくても、素材の違うシーリング部分は経年劣化している場合があるため注意が必要です。
外壁材の目地を埋めているシーリング部分の劣化状況も忘れず確認するようにしましょう。
小さな劣化の段階で修繕を施せば耐用年数を延ばすことができますが、放置しておいて雨漏りが発生すると、修繕に費用や時間がかかります。
構造自体に大きなダメージを与えてしまい、大がかりな改築工事が必要になってくるケースがあります。
外壁材やシーリング材のひび割れからどこまで雨水が浸入しているのかの確認は、専門業者でなければ判断が難しいでしょう。
業者に依頼し、サーモグラフィー調査などで内部までどのように劣化が進行しているのか確認するのがおすすめです。
(3)内装
内装は、主に床の点検が重要です。
床は日々の作業により劣化しやすい状況であるため、塗装の剥がれ、凹凸、サビが発生します。
床の塗装の剥がれは、従業員が滑ったり、凹凸につまずいたりといった事故につながりやすくなります。
塗装の剥がれたコンクリートは簡単に粉塵を巻き上げるので、製造過程でゴミが混入しやすくなるというリスクも高まります。
また、雨漏りが発生すると、発生しない場合に比べて内装の劣化状況が早く進みますので注意しましょう。
3. 工場・倉庫のメンテナンス
どのような建材で工場や倉庫を建ててもいずれは寿命を迎えますが、定期的なメンテナンスを施すかどうかで、法定耐用年数より短い期間で改修工事をしなければならないか、長持ちするのかが決まってきます。
ですから、鉄筋コンクリート造であれば耐用年数は38年ですが、その間なにもケアしなくてもいいというわけではありません。
鉄筋コンクリート造でも10年に一度はメンテナンスを施す必要があります。
それではどのようなメンテナンス方法があるのか、費用相場と併せて確認していきましょう。
(1)工場・倉庫の建材と主なメンテナンス方法
工場や倉庫の建材には、耐久性に優れたガルバリウム鋼板素材が多く用いられていますが、塗装が剥がれた状態を放置しておくとその部分にサビが発生し、穴があいてしまって雨漏りしていきます。
外壁や屋根は、軽度の劣化であれば「塗装」で修繕ができます。
塗装メンテナンスの場合、使う塗料によっては耐久性が向上しますし、遮熱性に優れている塗料では省エネ効果の向上も期待できます。
塗装メンテナンスでは修繕が厳しいものの、構造自体の強度に問題がない場合は、「カバー工法」で上からもう1つ屋根材や外壁材を施工します。
これまでの建材を撤去する必要はありませんので、撤去費用や廃棄処理のコストを抑えることができます。
カバー工法は工期が短いので、工場や倉庫の稼働にも負担がかからないというメリットもあります。
建築して10年目に塗装メンテナンス、20年目にカバー工法というように、定期的にメンテナンスをすると工場や倉庫の寿命は延びます。
一方でメンテナンスを施さずに建材自体の耐用年数が経過している場合は、構造自体が劣化していきますので、カバー工法では修繕しきれません。
耐用年数まで至った場合のメンテナンスは、屋根材を撤去して葺き替えたり、外壁材を撤去して張り替えたりといった大がかりな工事となります。
建材の耐用年数に至っていなくても、雨漏りなどが発生していると構造に大きなダメージを受けますので、葺き替えや張り替えになります。
また、室内の床については、塗装が剥がれている、ラインが消えているといった状態は、塗装メンテナンスで十分に対応可能です。
(2)メンテナンスにかかる費用相場
ここでは、屋根材や外壁材のメンテナンスにかかる費用の相場をお伝えします。
塗装メンテナンスに使用する塗料は大きく分けて4つあり、価格や耐用年数はそれぞれ異なります。
「ウレタン塗料」が最も安価ですが耐用年数は8年、「シリコン塗料」や「遮熱塗料」は10年、最も耐久性に優れた「フッ素塗料」は12年です。
工場や倉庫内の夏場の温度が高温になり、冷房を最大にしても30℃に達するような状態であれば、遮熱塗料にするだけで室内の温度上昇を軽減できます。
●屋根・外壁塗装メンテナンス費用目安
塗料 | ウレタン | シリコン | 遮熱 | フッ素 |
---|---|---|---|---|
1㎡あたり | 5,000円~ | 6,000円~ | 6,000円~ | 7,000円~ |
50坪 | 90万円~ | 100万円~ | 100万円~ | 120万円~ |
100坪 | 170万円~ | 200万円~ | 200万円~ | 230万円~ |
300坪 | 530万円~ | 600万円~ | 600万円~ | 710万円~ |
●カバー工法価格目安
修繕箇所 | 外壁 | 折板屋根 | 波型スレート |
---|---|---|---|
1㎡あたり | 18,000円~ | 8,000円~ | 1万円~ |
●屋根葺き替え・外壁張り替えの価格目安
修繕箇所 | 外壁 | 折板屋根 | 波型スレート |
---|---|---|---|
1㎡あたり | 22,000円~ | 18,000円~ | 3万円~ |
4. まとめ
工場や倉庫には、建材や構造によって耐用年数があります。
耐用年数が近づいてきたので慌ててメンテナンスをするようだと、ひび割れから雨水が侵入していて塗装メンテナンスでは修繕できない状態になっている可能性が高いです。
10年に一度のメンテナンスはその都度費用がかかりますが、トータルで考えると工場や倉庫が長持ちするので、経済的にもメリットがあります。
どのような建材であっても、なるべく早め早めのメンテナンスを心がけましょう。
- カテゴリー : 減価償却&耐用年数