倉庫が取り組むべき省エネとSDGs
物流業界において「倉庫」は商品を保管するだけでなく、検品や仕分け、組み立て、梱包といった作業をしたり、事務所処理をしたりする重要な場所です。
こういった倉庫でSDGsを取り組んでいくことは、事業者にとってさまざまなメリットがあります。
ここでは、倉庫の省エネの重要性と、効果的な省エネの方法、そしてその効果について詳しくご紹介します。
目次
1. 倉庫(物流業)に求められるSDGs
2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals:通称SDGs)には、物流業界の事業活動に求められる内容もいくつか含まれています。
まずは、倉庫を保有する物流業界に求められている取り組みについて確認していきましょう。
(1)効率的なエネルギー利用や温室効果ガス削減
17あるSDGsの目標の中で、ゴール7は「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」というものです。
工場同様に倉庫でも多くのエネルギーが消費されており、その消費量を削減する取り組みや、効率的なエナルギーを利用できる設備投資が事業者に求められています。
また、ゴール12は「つくる責任、つかう責任」となっており、枯渇が懸念される資源の利用を減らしていく取り組みや、地球環境問題に直結する温室効果ガスを削減する取り組みも求められています。
(2)働く人の労働環境の改善
SDGsの目標のゴール8は、「働きがいも、経済成長も」両立して高めていくというものです。
自社の売上向上の取り組みだけでなく、すべての労働者が安全・安心に働ける環境整備もまた事業者に求められています。
(3)無駄を省いた生産効率の良い製造形態
ゴール12の目標達成には、物流業界が「3R」を意識してこれまでの取り組みを変えていく必要もあります。
3Rとは無駄を省いた生産効率の良い製造形態を実現するための、「リデュース」(温室効果ガスなどの発生抑制)、「リユース」(資源の再利用化)、「リサイクル」(再資源化)のことです。
2. 倉庫(物流業)がSDGsに取り組むメリット
それでは倉庫を保有する物流業界がこのようなSDGsに取り組むことによって、どのようなメリットを得られるのでしょうか。
世界共通の目標ですから、SDGsに取り組んでいる実績は社会信用アップに繋がりますし、経済面や運営面でもたくさんのメリットがあります。
(1)光熱費の削減
倉庫を維持するための消費電力を軽減できれば、毎月必要経費として支払っていた光熱費を削減できます。
近年、エネルギー価格は高騰していますので、光熱費を抑えられないと経営は苦しくなっていきますから、倉庫で消費するエネルギーの省エネ化は急務です。
(2)労働環境向上による離職者の軽減
猛暑の期間、暑い倉庫の中で働いていると、従業員が熱中症になったり、頭の中がぼんやりしたりしてミスや事故につながるケースが多くなります。
また、そのような労働環境が改善されなければ離職者は増えていくでしょう。
倉庫の環境を今まで以上に良い状態にすることで、離職者を減らすことができ、快適な労働環境をアピールすることで求人をする際に働き手が集まりやすくなるメリットがあります。
(3)生産コストの削減
倉庫でのSDGsの取り組みは、光熱費といった消費エネルギーを削減するだけでなく、従業員が働きやすくなりますので、作業効率も上がり、全体的な生産コストを削減することにつながります。
3. 倉庫(物流業)の遮熱塗料によるエネルギー消費量の削減
SDGsについて、倉庫で真っ先に取り組むべき項目は「省エネ」です。
特に近年は猛暑日が多くなり、夏の時期は冷房をフル稼働しても倉庫内が30℃までしか下がらないケースもあります。
この消費電力を削減しつつ倉庫内の温度を下げる省エネ化が、全体のエネルギー消費量を削減し、倉庫内で働く従業員の労働環境を改善していきます。
(1)倉庫によく使われる外壁材と断熱性能
猛暑の中、倉庫内の室温の上昇を効果的に軽減されるには、屋根や外壁の耐熱性能を高めるのが一番です。
倉庫によく使用される外壁材の種類と断熱性能について比較してみましょう。
以下の表はそれぞれの熱伝導率(W/m・k)と、金属サイディングの厚さを1としたときの断熱効果に対して、ほかの外壁材で同じ効果を得るために必要な厚さを示しています。
外壁材種類 | 熱伝導率 | 比較値 |
---|---|---|
金属サイディング | 0.022~0.0026 | 1.0 |
窯業系サイディング | 0.13~0.15 | 5.9 |
ALCパネル | 0.15~0.17 | 6.8 |
スレート | 0.5 | 23.0 |
モルタル | 1.1~1.3 | 50.0 |
最も断熱性能に優れているのが、金属サイディングとなります。
一般的に金属は熱伝導率が高く、断熱性能が低いイメージはありますが、建材として製品化されている金属サイディングについては断熱材と一体となっているため、ほかの素材と比べて非常に高い断熱効果を発揮する優れた外壁材です。
現在の倉庫の外壁材がモルタルやALCパネルであれば、金属サイディングに全面改修することで倉庫の省エネ化を進めていくことができます。
しかし、それには高額な費用がかかりますし、改修工事にも時間がかかります。
そこでおすすめなのが、倉庫内の室温上昇を軽減させるため、遮熱塗料を屋根や外壁に塗装するという方法です。
(2)物流センター塗装後のサーモカメラ画像
それでは具体的に、遮熱塗料を塗装することでどのくらいの効果があるのか、実例を紹介して比較していきます。
まずは物流センターの屋根に遮熱塗装を塗装した後の、サーモカメラの画像を見ていきましょう。
赤色の部分は遮熱塗装をしていない外で、60℃を上回っています。
黄色、緑色は赤色の部分よりは温度は下がりますが、それでも高温状態です。
一方で遮熱塗装をした屋根については、一面最も低温の青色になっています。
遮熱塗料で保護した屋根の部分とそれ以外の場所の温度差は、最大で20℃以上も違いがあるのです。
(3)定温倉庫における塗装後の温度変化
続いて、これまでの設備ではどれだけ冷やしても定温の20℃まで下げることができなかった定温倉庫に、遮熱塗料で塗装した後と比較してみます。
塗装前は定温以上の23℃だったのが、塗装後は19℃と、定温よりも下げることに成功しています。
遮熱塗料で塗装する省エネで、倉庫の夏場の温度維持管理が簡単になります。
(4)冷凍倉庫における月別・電力消費量の変化
さらにすでに高性能の断熱材を使用しているコンクリートの厚さが55cmの冷凍倉庫でも、遮熱塗料で塗装すると、平均の電気代を10%も削減できています。
塗装後のおよそ8カ月で、なんと617万円もの電気代を削減できているのです。
外壁や屋根に断熱材を入れている場合でも、遮熱塗料を塗装することでより高い省エネ効果が実現できます。
(5)コンテナにおける遮熱塗装後の温度推移
ほかにも遮熱塗料の塗装は簡易施設の暑さ対策に絶大な効果を発揮し、ユニットハウスでは塗装前に29.3℃だった室温が塗装後には25.2℃となっています。
コンテナ各種でも塗装前が内部温度54.5℃だったのが、塗装後には38.5℃と16℃も内部温度の上昇を軽減しています。
4. まとめ
倉庫の省エネ化を進めるにあたって、必ずしも倉庫の屋根や外壁を工事改修しなければいけないわけではありません。
倉庫の省エネは、遮熱塗料を塗装することで大きな成果をあげることができます。
SDGsの最初の取り組みとして、遮熱塗料を塗装することをおすすめします。
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