工場・倉庫の耐用年数とリフォームの最適なタイミング
工場や倉庫は、建材の種類や室内での作業内容によって、耐用年数(耐久年数)や減価償却の期間が異なります。
ここでは、工場や倉庫の耐用年数や減価償却、それを踏まえてリフォームする最適なタイミングについてご紹介します。
目次
1. 工場・倉庫の耐用年数はどのくらい?
工場や倉庫を最適なタイミングでリフォームするためには、建材や作業内容によってどのくらいまで耐用年数があるのかを知っておく必要があります。
国税庁のWebサイトに「法定耐用年数」の詳細が掲載されており、こちらの耐用年数を目安にして減価償却の期間が決定します。
(1)耐用年数は建材や用途で異なる
建材や作業用途によって法定耐用年数がどれだけ違うのか、国税庁が発表している耐用年数表で比較してみましょう。
●法定耐用年数
作業用途 | 鉄骨鉄筋コンクリート 鉄筋コンクリート | れんが造 石造 ブロック造 | 金属造 肉厚4mm超 | 金属造 肉厚3mm超~4mm | 金属造 肉厚3mm以下 | 木造 合成樹脂造 | 木骨モルタル造 |
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通常の工場 | 38年 | 34年 | 31年 | 24年 | 17年 | 15年 | 14年 |
通常の倉庫 | 31年 | 30年 | 26年 | 24年 | 17年 | 15年 | 14年 |
冷蔵倉庫 | 21年 | 20年 | 19年 | 24年 | 17年 | 15年 | 14年 |
腐食性の液体や気体、放射線を受ける工場 | 24年 | 22年 | 20年 | 15年 | 12年 | 9年 | 7年 |
潮解性の固体を蔵置、著しい蒸気の影響を受ける工場 | 31年 | 28年 | 25年 | 19年 | 14年 | 11年 | 10年 |
このように耐用年数は最長で38年、最短で7年と建材や作業用途で大きな差があります。
例えば木骨モルタル造の工場であれば14年で改修工事が必要になってきますし、鉄筋コンクリート造であれば38年も長持ちするので、改修工事はかなり先の話になります。
なお上記の法定耐用年数は、定期的にメンテナンスを施したケースであり、何もメンテナンスせずに38年は大丈夫というわけではありません。
立地条件によっては劣化が早まったり、メンテナンスをせずに放置しておくと耐用年数よりも前に大規模な改修工事が必要になったりする可能性があります。
(2)耐用年数と耐久年数の違い
工場や倉庫を建てる際に業者から提示される年数の数値は、上記の法定耐用年数と誤差があるかもしれません。
それは業者が間違っているわけではなく、表示しているものが耐用年数ではなく、「実耐久年数」だからです。
耐用年数と耐久年数が異なる理由は、耐久年数とは業者が独自に判断した寿命であり、ここまでの期間であれば問題ないだろうという推定になります。
一方で耐用年数は工場や倉庫の寿命というよりも、銀行などの融資を受ける際の会計手続き上の投資費用配分や節税に必要な減価償却の計算基準として使われるものです。
ですからどのくらい長持ちするのかといった目安は、耐用年数よりも耐久年数の方が現実に近い数値になります。
建材が同じで作業用途も同じであっても、工場や倉庫の立地条件で耐久年数は変わってきますし、依頼する業者によっても独自の判断のために異なります。
最適なリフォームの時期を計算するには、まず業者が提示する耐久年数を参考にするのがいいでしょう。
2. 減価償却とは
減価償却とは、工場や倉庫建設にかかった費用を全額その年度の費用として計上せず、決められた耐用年数の期間で分配して計上するものです。
建設した年度に全額費用として計上してしまうと利益がなくなり、赤字の計上となってしまって銀行からの融資を受けられなくなる可能性があります。
減価償却して計上していくことで、正確な利益を公表できるのです。
例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造の工場で、作業において著しい蒸気の影響を直接受ける場合の耐用年数は28年と定められています。
つまりこの工場建設にかかった費用を、減価償却によって28年に分けて費用として計上していくのです。
耐用年数は定期的なメンテナンスを施すことも含めていますので、何もメンテナンスをせずに放置して利用していた場合は、28年経過する前に大がかりな改修工事が必要になります。
そうなるとさらに改修工事の費用がかかり、その改修工事に使った建材や作業用途によって減価償却する期間が加わります。
3. リフォームの最適なタイミングはいつ?
工場や倉庫の最適なリフォームのタイミングは、耐用年数(耐久年数が異なる場合は、耐久年数を優先)を目安にしていくのがいいでしょう。
リフォーム費用を計画的に積み立てていくと、いざリフォームしようとしたときに資金に困ることはありません。
ただし、立地条件や自然災害などによって経年劣化が早まるケースもあります。
さらに定期的なメンテナンスを施していない場合、ひび割れなどから雨水が浸入し、雨漏りが発見された場合は構造自体に大きな問題が生じていて、早く改修工事をしなければいけなくなります。
耐用年数に満たなくても10年ごとには専門業者に依頼をし、隅々まで調査してメンテナンスを行い、場合によってはリフォームを検討しましょう。
耐用年数とは別に、リフォームする絶好の機会が来るケースもあります。
近年、日本だけでなく世界規模で省エネやSDGsの取り組みが重要視されており、国も全面的に支援する体制を整えています。
脱炭素の取り組みには補助金を交付していますので、補助金制度が有効活用できる今が、リフォームする最適なタイミングです。
脱炭素社会に貢献するための新しい設備を導入するのであれば、補助金を使ってリフォームできる可能性があります。
SDGsの取り組みは、省エネやCO₂排出量削減だけがテーマになっているわけではなく、労働者の環境改善も目標に含まれています。
より従業員が働きやすい労働環境を整備する場合も国の支援対象となり、補助金が交付されるケースがあります。
工場や倉庫のリフォームを検討している場合は、省エネ化や労働環境改善などを推進するための補助金や支援制度の詳細をしっかり確認してから始めることをおすすめします。
4. リフォーム&メンテナンスするメリット
工場や倉庫が耐用年数を迎える前に大がかりな改修工事をしなければならなくなると、それだけ高額な費用がかかってしまいます。
こまめに定期的なメンテナンスを施していけば、耐用年数以上に工場や倉庫を長持ちさせることも可能です。
屋根や外壁、床の塗装が剥がれていたり、ひび割れを見つけたりした際には早めに塗装メンテナンスを施して工場や倉庫の寿命を延ばすことができれば、経済面で大きなメリットがあります。
さらに定期的なメンテナンスによって、屋根や外壁の遮熱性を維持・向上し、室温の上昇を軽減することで、室内で働く従業員の熱中症を予防し、快適的な労働環境を提供できます。
また床の経年劣化によって凹凸ができ、そこでつまずくような事故も減りますので、従業員の安全を守ることにもつながります。
これから先、SDGsの目標は世界共通の課題であり、中小企業においても労働環境の整備は求められます。
しっかりとその点に対応している企業だと内外にアピールできれば、企業の信用性も高まり、能力の高い人材も集めやすくなるメリットがあります。
再生可能エネルギーを利用する機器を導入し、リフォームすると初期費用はかかりますが、省エネ効果やブランディングなどの効果があり、長い目で見ると中小企業にとって大きなメリットになるのです。
5. まとめ
新しい設備を導入するといった取り組みではなく、雨漏りなどによって工場や倉庫の改修工事の規模が大きくなると、前倒しで負担額も大きくなってしまいます。
不具合が生じる前に定期的なメンテナンスを施すことで、工場や倉庫の寿命を延ばすことができます。
工場や倉庫の建材や、使用区分に応じた耐用年数、専門業者が提示する耐久年数を上手に活用し、計画的なリフォームができるように管理していくことが重要です。
- カテゴリー : 減価償却&耐用年数