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工場が取り組むべき省エネとSDGs

日本だけではなく世界中がSDGsの目標達成に向け動いている中、省エネ効果を大きく期待できるのがエネルギーを大量に使用している製造業界です。

この記事を読むと、工場に求められているSDGsの取り組み内容と、エネルギー消費量を効果的に削減する方法がわかります。

目次

1. 工場(製造業)に求められるSDGs

SDGsで工場に求められている取り組みは、ゴール7、8、12の項目です。
具体的にどのような内容なのか確認していきましょう。

(1)効率的なエネルギー利用や温室効果ガス削減(ゴール7および12)

全業界の中で製造業は、エネルギー消費量がトップクラスに入ります。
特に石油や石炭製品といった化石燃料を多く利用していますし、電力使用量も多いので化石燃料を使用する火力発電の負担も大きいのが特徴です。
そのため工場には、効率的なエネルギーの利用や、温室効果ガスを削減する設備投資や工夫が求められています。

こちらはSDGsのゴール7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」という目標と、ゴール12「つくる責任・つかう責任」という目標達成に必要な取り組みです。

(2)働く人の労働環境の改善(ゴール8)

SDGsには地球環境問題の改善していくための取り組みのほかに、ゴール8のような働く人の労働環境の改善も含まれています。
誰もが安全に働くことのできる労働環境の整備もまた工場に求められているのです。

(3)無駄を省いた生産効率の良い製造形態(ゴール12)

SDGsのゴール12については、消費エネルギーを削減していくことはもちろん、工場が稼働することによって環境破壊につながる汚染物質の発生を防ぐことや、資源をリサイクルしていくことも求められています。

無駄を省いた生産効率の良い製造形態については、「3R」が合い言葉です。
3Rとは、「リデュース」(二酸化炭素や汚染物質などの発生抑制)、「リユース」(再使用)、「リサイクル」(再資源化)で、継続可能な循環型社会を形成するために必要な要素です。

2. 工場(製造業)がSDGsに取り組むメリット

物価上昇の現状の中で、工場でのSDGsに取り組むことに対して負担に感じるかもしれません。
しかし、SDGsの取り組みは事業者に多くのメリットをもたらします。

この点を理解しておくと省エネ化に取り組みやすくなりますので、確認していきましょう。

(1)光熱費の削減

エネルギーの消費を削減するために設備投資を行うと、電気代や石油代などの光熱費を削減できます。
エネルギー価格は高騰しているため、工場の光熱費を少しでも削減できれば経営はその分だけ楽になります。

(2)労働環境向上による離職者の軽減

労働環境を整備するための取り組みは、より働きやすい環境を従業員に提供できるため、離職者を軽減できます。
各業界で人手不足が問題になっていますので、離職者を減らすことは大きなメリットです。

労働環境向上に取り組んでいるという点は求人の際にもアピールできますので、働き手を集めやすくなるメリットもあります。

(3)生産コストの削減

省エネ化が実現できれば生産コストを削減できますので、長期的な運営においても大きなメリットが期待できます。

売上高が同じであってもコストを削減できていれば、純利益を増やすことができるためです。
生産コストを削減することで、小回りの利く工場経営を実現できます。

3. 工場の遮熱塗料によるエネルギー消費量の削減

工場の省エネ化にはクリーンなエネルギーを利用する新しい機器を導入したり、照明をすべてLEDに交換したりといった方法がありますが、より効果的なのは、外の温度を遮断して室温の上昇を軽減させる遮熱塗料の塗装による外壁や屋根の改修です。

外壁や屋根の断熱効果が低いと、冷房を強くしても工場内の室温が30℃というケースは珍しくありません。
これでは電力消費を削減することは難しく、また、暑さによる熱中症やストレスなどで従業員の労働環境も改善されません。

遮熱塗料による省エネは工場のエネルギー消費量を削減するだけでなく、従業員の安全・安心の面でも効果が期待できます。

(1)工場によく使われる外壁材の種類と断熱性能

外壁材にはいくつかの種類があり、外壁材によって製造方法・性能・価格が異なります。
省エネ効果を高めるためには、断熱性能に優れた外壁材を採用するのがいいでしょう。

最も優れているのが表面はスチール板、裏に断熱材を入れている金属サイディングです。
原板はコストの安いガルバリウム鋼板か、腐食性が高いアルミニウム製の2種類があります。

以下の表はそれぞれの熱伝導率(W/m・k)と、金属サイディングの厚さ1の断熱効果に対して同じ効果を得るために必要な厚さを示しています。

◀ 表は左右にスクロールできます ▶
外壁材種類熱伝導率比較値
金属サイディング0.022~0.00261.0
窯業系サイディング0.13~0.155.9
ALCパネル0.15~0.176.8
スレート0.523.0
モルタル1.1~1.350.0

金属サイディングと同じ断熱効果を得るためには、窯業系サイディングだとおよそ6倍の厚みが必要になりますし、モルタルだと50倍の厚みにしなければなりません。

(2)工場の省エネ効果

しかし、工場の省エネのために外壁材を交換するとなるとコストもかかりますし、工事期間も長期になります。

そこでおすすめなのが「遮熱塗料」による外壁や屋根の塗装です。
実際にベトナム・カンボジアの工場の施工例をそれぞれ比較してみます。

・室内温度の変化

まずは電子部品工場の事例です。
室内温度について注目してみると、外気温が36℃で推移していく中で、遮熱塗料の塗装前は、天井付近の室温が午前11時頃から36℃を突破し、午後2時頃には44℃付近となっています。
猛暑になると外気温よりも室内の温度が高くなっているのです。

遮熱塗料の塗装後の室温を見てみると、36℃を上回ることは一度もなく、午後2時でも33℃ほどですので、塗装前より10℃以上も下がっています。

室内温度が下がれば、夏場は従業員にとって働きやすい労働環境を提供することになります。
もちろん室温上昇を軽減させられるので、電力の消費量も抑えることができます。

・電気使用量の削減

次に、アパレル製品製造工場の事例です。
電力の消費量に注目してみると、遮熱塗料を塗装した工場としていない工場では、同規模の工場を比較した場合に、9月から10月の1カ月間の電力消費が23%も削減できたという結果が出ています。

遮蔽塗料によって夏場の温度上昇を防ぐことで、従業員にとっては働きやすい労働環境を実現し、企業にとっては地球環境に配慮しながら電力消費を抑え、大幅なコストカットを行うことができます。

(3)タンク類・サイロ・配管などの省エネ効果

遮熱塗料の省エネ効果は工場の室温上昇を軽減するだけではありません。
タンク類やサイロ、配管などに遮熱塗料を塗装することで、夏の時期の液体窒素などの蒸発を抑制することもできます。

極低温タンク(LN₂液化窒素タンク)を例にして比較してみましょう。
遮熱塗料塗装前は8月の自然蒸発量が188,664円だったのに対し、塗装後の翌年8月は148,411円と、40,253円分の自然蒸発を抑制できているのです。
割合で換算すると、遮熱塗料の塗装前と後では自然蒸発が21%も抑制できています。

工場自体の遮熱塗装だけでなく、タンク類などの設備に対しても塗装することで、より省エネ効果を高められるのです。

(4)室外機・制御盤・変電施設などの高熱による故障の抑制

工場内設備の室外機や制御盤、変電施設などに遮熱塗料を使用することで、夏場の熱による計器類の誤作動や、高温による故障を抑制します。
遮熱塗料の有無による温度効果検証実験によると、塗装なしでは38℃、塗装ありでは26℃となり、12℃の温度上昇抑制効果がありました。

工場で使用する大規模な機械類が高熱によって故障すると、その修理には大きな費用がかかります。
こうした機械や制御装置の故障や誤作動を防ぐことは、工場設備を長持ちさせ、長い目で見ると大幅なコストカットにつながります。

また、計器類の誤作動や機械類の故障のない工場環境は、従業員が安全に作業できる労働環境向上にもつながっていきます。

4. まとめ

SDGsの目標達成において、製造業の工場の省エネは重要な鍵を握っています。
効率良くコストを抑えながら省エネ効果を高める方法として、遮熱塗装を利用するのはおすすめです。

労働環境を整備することで、工場で働く従業員の安全性を高められますし、モチベーションもアップするでしょう。
省エネに取り組むことは、工場に大きな恩恵をもたらすのです。